昭和大学藤が丘病院外科は、大きく分けて、消化器・一般外科、乳腺外科、小児外科に区分されます。私自身は下部消化管及び肛門の外科を専門として参りました。大腸癌の手術、化学療法は言うに及ばず、炎症性腸疾患の治療についても貢献してきたものと考えております。現在は外科医長として、これらの仕事をさらに押し進めることは勿論、その他の消化器疾患についても研鑽を重ね、地域の皆様に、常に最先端の医療を供与しているものと考えております。
しかし先端医療ばかりを追い求めると、ややもすれば患者様のニーズを見落としたり見失ったりする事があります。私は常々医療というものは、患者様と医療関係者との間に構築される信頼関係の上に成り立つものと考えております。自分も含め外科医局員には、まず患者さんとのコミュニケーションを緊密に取ることが第一と教育しております。我々はこうした全人的な医療を供する事により、患者様からは常に高い信頼を勝ち得ているものと自負しております。
近年、全国的に外科医不足が取沙汰されるようになってきました。これは取りも直さず外科医の仕事には、手術やその後の患者管理といった高度な技術を要するものが多く、しかも拘束時間が長い上に緊急の診療も多いといった事が挙げられます。しかしながら医師の本来の使命である、病気を治すよう患者様のために尽くす、という観点から言えば、外科の診療はまぎれも無くその使命に直結していると自負しています。こうした医師の基本的資質を教育し、患者様のために尽くせる医師の育成に尽力してきましたし、これからも続けて行きたいと考えております。
我々の研究について述べさせて頂きます。自然科学の爆発的な発展により、基礎医学と臨床医学の垣根がしだいに無くなり、今や医学全体が生命科学という広い観点からとらえられる傾向にあります。実際、近年トランスレーショナルリサーチという分野が確立され、基礎的な研究の成果が実際に臨床応用されるようになってきております。しかし、一般的に考えると、外科学を志す者はまず優れた臨床医になることを志していると考えられますので、まずは手術手技や術後管理などの外科医としての基本を学ぶことが最優先と考えられます。しかしながら、大学は常に世の中の最先端の仕事をしなければならないという使命を考える時、次には基礎や臨床研究を学ぶ必要があると考えられます。外科系の専門医を取得するために何本もの論文が必要とされることも、その反映と考えられます。自分がこれまで行ってきたトランスレーショナルリサーチを具体的にわかりやすく教育することが、最先端の医学への興味を惹起し、優れた人材の育成に寄与できるものと考えております。勿論、最先端の医学教育を重視しすぎると、頭でっかちの人間性の欠落した医師を生み出す危険性があることも常に念頭におきたいと考えています。サイエンスに基づいた医療を実践でき、かつ人間性豊かな医師を育てるために努力したいと考えております。
また私は、外科医としてそして研究者としてさまざまなタイプの固形癌に携わってきましたが、私が癌の研究をしている最大の目的は、つねに癌患者の診断や治療、予防に、研究の成果を直接役立てて、その癌の根治に寄与することにあります。その点で臨床と研究のどちらも行うことのできる大学という環境にあっては、臨床に即した高度なトランスレーショナルリサーチを展開できるものと大いに期待しております。そして、研究成果を臨床に還元していくことを目指すうえで必須な、臨床部門と基礎部門との円滑な連携の醸成を含め、これまで基礎と臨床の両方に携わってきました私の経験は、大いに役立つものと信じております。
